交渉のキーポイント
よりよい契約成立のためには、こちら側の主張を全て通すのが理想的ですが、そうはいかないことも多いので、やむを得ない範囲で、かつ現実的に負える範囲でリスク背負っていくということになるでしょう。
その時のキーポイントは、1)契約の書面化、 2)契約書内容の確認、 3)契約書をこちら側から提示することの3点があげられます。
1.契約書の書面化
例えば、企業が自社開発の商品を売り込む場合、売込みを成功させ、顧客の承諾を取り付けて商談を成立させ、契約書にサインしてもらうということになります。また、契約書にサインするまでにもう少し時間がかかりそうだという場合には、とりあえず覚書や仮契約書とか何でもいいからとりあえず書面にサインしてもらいます。
契約の効力は原則として口約束でも発生しますが、契約を書面化して相手方からの署名をもらうことには理由があります。一つは、先ほどご説明したように、口約束だけでは証拠にならないからということ、もう一つは、署名をもらうことで、相手方を心理的に契約に拘束させ、撤回を防止するという意味でしょう。 すなわち、書面という形式を用い、相手方に署名をさせるということが、契約交渉にあたっての戦略の骨格をなすのだと考えることができます。
2.契約内容の確認
書面という形式を利用したいというそのことだけに集中してしまうと、契約書の内容自体が疎かになってしまいがちです。前項でご説明したとおり、契約の内容をしっかり作るということは、大変重要です。
自社側で契約書を作成しておく場合、社会通念上不相当とならない範囲で自らのリスクを低減しておくことが必要になります。
また、契約書に書かれた内容が自社に有利なのか不利なのかの他、関連法令の規定と比較し違法・無効な条項が無いかチェックする必要もあります。
契約を急ぐばかりに他のひな形切貼り型の契約書を作成してしまい、そのことによって事後に起こるトラブルに十分対処できなかったということがないように注意すべきでしょう。
3.契約書をこちら側から提示すること
契約書について、将来のトラブルの可能性、その防止、解決の方法を事前に検討した契約書ができた場合、その契約書の提示をこちら側から早めにすべきでしょう。
契約交渉をする場合、契約内容の全てを話し合ってから契約書を最初から作るということはなく、当事者のどちらかが予め契約書案を用意しておき、もう一方がその内容を検討し、問題がなければ双方署名捺印する、という方式が通常です。このことからも、契約交渉の主導権を握り、できるだけ自社に有利な契約を締結したいと考えるのであれば、こちら側から自社に有利な契約書をまず提示すべきでしょう。
そのためには、自社の業務に関する契約書をパターン化して予め整備して取り揃えておき、契約交渉の場におよんで相手方に契約書を作成、準備させるのではなく、こちらからいつでもすぐに取り出せるようにしておくことが不可欠となるのです。
もし、相手側から先に契約書を提示された場合には、その契約書に書かれた内容が、自社の通常の契約書に比べてどのように不利に修正されているのか等を確認して、場合によっては適切に異議を述べることができるような交渉をしていくことになります。