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住宅宿泊事業法(いわゆる民泊新法)とはどんな法律か

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今回は、2017年6月9日に国会で成立し、2018年6月15日から施行されている住宅宿泊事業法、いわゆる民泊新法の説明をします。

第1 総論

1 日本の正規の宿泊施設には、ホテル、旅館の他、山小屋やユースホステルなどの簡易宿泊営業、下宿営業があり、すべて旅館業法という法律で規制されています。簡単にいえば、これらの宿泊施設を営業するためには、それぞれの都道府県知事に対して営業許可申請をし、施設の構造や設備が条例などで定める基準に達しているかどうかの審査に合格した上で営業許可をもらわなければなりません。

2 ところが、昨今、外国人観光客の急増もあり、安くて多様な日本国内の旅行をというニーズが高まるにつれ、個人が、所有する家屋や賃借住宅を利用して、旅館業法や条例などで定める審査や営業許可を受けずに宿泊を有料で提供するケースが増え、法律などの規制を逸れたり、騒音、ゴミ出しなどの近隣トラブルが発生したり、その他、安全面や衛生面でも野放し状態となっていました。

3 旅館業法や条例などが定める基準をクリアするには、投下資金も含めてハードルが高すぎる反面、旅館やホテル以外の安く簡易な宿泊施設の需要の高まりという現実があり、旅館業法とは別の基準を定めて監督、規制する必要が出てきたのです。

4 そこで、旅館業法に規定する宿泊施設を経営するのではない者が、宿泊料をもらい、その住宅に他人を宿泊させる事業を行う場合であって、宿泊日数が年間で180泊を超えないものに限り、旅館業法などとは別の規制下、一定の条件のもとで宿泊事業を行うことを認めたのが民泊新法だということになります。

5 民泊新法に関連する法令は概ね以下のとおりです。
(1)住宅宿泊事業法の施行日を定める法令
(2)住宅宿泊事業法施行令
(3)住宅宿泊事業法施行規則
(4)土交通省関係住宅宿泊事業法施行規則
(5)厚生労働省関係住宅宿泊事業法施行規則
(6)住宅宿泊事業法施行要領(ガイドライン)

6 では、この法律などでは、誰をどのように監督、規制しているのでしょうか。その概略を述べたいと思います。

 

第2 住宅宿泊事業者(自ら宿泊事業を営む者をいいます)

1 都道府県知事への届出と登録をし(*受理代行、処理機関があります)、その監督に服します。
*保健所設置市の長(政令市、中核市等)、東京都特別区の長

2 年間提供日数の上限は180泊までです。

3 条例の規制を受けます(都道府県の他、1*の市や東京都特別区)。

4 「家主在住型」の場合と「家主不在型」の場合とでは規制内容が異なります。(1)家主在住型の場合は、自分で全部やればいいのです。
(2)家主不在型の場合
衛生確保、騒音防止、近隣からの苦情対応、宿泊者名簿の作成、備付けなどの措置を住宅宿泊管理業者に委託しなければなりません。

 

第3 住宅宿泊管理業者

1 第1の宿泊事業者から管理委託を受け、宿泊者のチェックインからチェックアウトまで、宿泊者名簿の作成、備付け、施設の清掃など衛生面、防火設備など安全面、その他、騒音防止、ゴミ出し、トラブル防止と対策など管理全般について受託業務を行います。

2 宿泊事業者とは、管理委託契約の締結や管理委託料の合意などをします。

3 国土交通大臣の登録とその監督に服します。

 

第4 住宅宿泊仲介業者

1 第1の宿泊事業者らから宿泊に関する情報提供を受け、その内容をインターネットなどで宣伝・広告して広く集客し、宿泊を斡旋・仲介する業者(多くがインターネット事業)です。
申込み、予約、宿泊代金の前払いなども仲介業者を通じて行います。

2 宿泊事業者とは、別途、契約を締結し、手数料ないし率などの合意をします。

3 観光庁長官の登録を受け、その監督に服します。

4 宿泊者に対する住宅宿泊仲介業務に関する契約約款を定め、観光庁長官に届け出なければなりません。

 

第5 この法律にいう「住宅」の定義と要件

簡単にいうと、以下にいう「設備要件」と「居住要件」の両方を満たしていることです。

1 設備要件
(1)台所、浴室、便所、洗面の各設備が揃っていることです。
(2)必ずしも1棟の建物内にある必要はありませんが、同一の敷地内にあって一体的に使用できる権限があり、各建物内のこれらの設備が使用可能な状態にあれば、これら複数の建物を一つの「住宅」として届け出ることができます。
(3) 建物それぞれが独立する必要はなく、また、ユニットバス方式でもよいし、浴槽がなくシャワーだけでもよいとされています。便所は洋式、和式のいずれでもオーケーです。
(4)近隣の公衆浴場を浴室として代替できません。

2 居住要件
次のいずれかにあたることが必要です。
(1)現実に特定の人が継続して生活している家屋であることです。
(2)住宅宿泊事業を行っている間、分譲または賃貸の形態で居住用住宅
として入居者の募集が行われている家屋であることです。ですから、広告上わざと不利な取引条件を提示するなどして、本当は入居者募集の意図がないと見られるような場合はだめです。
(3)生活の本拠とはいえないけれど、随時、その所有者、賃借人または転借人の居住の用に供されている家屋、例えば、別荘、セカンドハウスなどであればオーケーです。反対に、居住利用履歴がまったくない民泊専用の投資新築マンションでは認められません。
 

第6 住宅宿泊事業者、住宅宿泊管理業者、住宅宿泊仲介業者のことをもう少し詳しく説明します。

1 住宅宿泊事業者
(1)都道府県知事に届出をして、自ら宿泊事業を営む者のことです。
(2)届出と登録に必要な書類の準備
先ほど述べた「設備要件」と「居住要件」の両方を満たしていることを証明する住宅の図面、入居者の募集広告などの書類を添付することです。
(3)以下の要件を備える必要があります。
① 衛生の確保
居室の床面積は、宿泊者1人あたり3.3㎡を確保すること、清掃、換気を行うことなどです。
② 安全の確保
非常用照明器具を設けること、避難経路を表示すること、火災その他の災害発生時に宿泊者の安全の確保を図るために必要な措置を講じることなどです。
③ 外国人観光客である宿泊者への利便性、安全性の確保
外国語(何カ国語かまでの指示はありません)を用いて、住宅設備の使用方法、移動のための交通手段などの情報、火災、地震などの災害時における緊急連絡先に関する情報提供をすることなどです。
④ 宿泊者名簿の作成と保存(3年間)
本人確認を行うこと、宿泊者が日本国内に住所を有しない外国人であるときは、その国籍と旅券番号を記入することなどです。
⑤ 周辺地域への悪影響の防止
宿泊者に対し、騒音、ゴミ出し、火災の防止について各配慮すべき事項を説明した書面を備え付けることです。
⑥ 周辺地域の住民からの苦情等に対する適正かつ迅速な対応が求められます。
⑦ 届出住宅ごとに「標識」を掲示することです。
届出住宅の門扉、玄関などわかりやすい場所、概ね1.2m~1.8mのところに、「住宅宿泊事業(民泊):Private Lodging Business」と外国語併記の看板、他に、届出済(Certified)、届出番号(Number of Notification)、届出年月日(Date of Notification)、登録番号(Number of Certified Private Lodging Administrator)などを表記します。
⑧ 都道府県知事への定期報告
届出住宅ごとに毎年の偶数月の各15日までに、その前2か月間において人を宿泊させた日数と各宿泊者数、延べ宿泊者数、国籍別の宿泊者数などを報告します。
(4)「不在型」すなわち以下のいずれか場合、住宅宿泊管理業者への委託が必要となります。
① 一の届出の居室数が5を超える場合
③ 人を宿泊させる間、不在となる場合
宿泊事業者の生活の本拠地と隣接するか同一の敷地内にある建物である場合、または、日用品の購入など日常行為のために要する時間の範囲内(最大2時間程度)で不在となる場合は除きます。会社に勤務するような場合は、委託必須となります。
③ 宿泊管理業務の全部を一の管理業者に委託しなければならず、一部の委託や複数の管理業者への分割委託は認められません。
(5)住宅宿泊仲介業者または旅行業者への委託
宿泊所の宣伝・広告、宿泊契約締結の代理・代行、代金の受領などを他人に依託し、市場拡大と事務軽減を図りたいときに必要となります。

2 住宅宿泊管理業者
(1)国土交通大臣の登録を受けること
住宅宿泊管理業者登録申請書に必要事項を記載し、法第25条1項各号の事由(成年被後見人・被保佐人、一定の刑事前科、暴力団員、自己破産・未復権など)がないことの宣誓を行います。
申請書の提出先ですが、静岡県に主たる営業所または事務所がある管理事業者の場合は、国土交通省 中部地方整備局 建政部 建設産業課となります。所在、電話番号などは、国土交通省のホームページなどをご参照下さい。
(2)登録の申請事項と添付書類も、国土交通省のホームページをご参照下さい。
(3)管理業者が個人である場合と法人である場合とでは添付書類が異なりますので、ご注意下さい。
(4)添付書類の中で官公署が発行する証明書類は、原則として、申請時より3か月以内に発行されたものとなります。
(5)登録は5年ごとに更新が必要です。
(6)新登録時、1件あたり9万円の登録免許税の支払いが必要です。
(7)虚偽、誇大広告の禁止
宿泊管理者のサービス内容、宿泊者によって生じた損害に対する責任の所在・内容、報酬の額、契約の解除などについてです。
(8)不当な勧誘等の禁止(勧誘の方法、態様、時間帯などについてです)
(9)管理委託契約の締結と法定の書面(契約締結前と締結時)の交付が必要になります。書面には、以下の事項を記載する必要があります。
① 管理業者の商号、名称、登録年月日、登録番号
② 住宅管理業務の対象となる届出住宅
③ 管理教務の内容、実施方法
④ 報酬、その支払時期及び方法
⑤ 住宅宿泊管理業務の一部の再委託に関する事項
⑥ 責任及び免責に関する事項
⑦  契約期間(契約の始期と終期)に関する事項
⑧  契約の更新及び解除に関する事項
⑨ 法第40条による住宅宿泊事業者への報告事項など国土交通省のホームページに、標準的な管理委託契約書や書面の書式が掲載されています。
(10)住宅宿泊管理業務の全部の再委託は禁止されています。
(11)住宅宿泊管理業務の実施(法5~10条)
以下のとおりです。
① 宿泊者の衛生の確保
② 宿泊者の安全の確保
③ 外国人観光客である宿泊者の快適性、利便性の確保
④ 宿泊者名簿の備付け
⑤ 周辺環境への悪影響の防止に必要な事項の説明(ゴミ出し、騒音等)
⑥ 苦情への対応
⑦ 標識の掲示  登録を受けた営業所または事業所ごとに
⑧ 証明書の携帯(国土交通省令で定める様式の従業者証明書)
⑨ 営業所または事業所ごとに契約と業務の内容に関する帳簿の備付け(管理受託契約を締結した住宅ごとに業務内容を記載したものを作成、閉鎖後も5年間保存)
⑩ 住宅宿泊事業者への定期報告
契約に基づく管理業務の内容と状況を、届出住宅の維持保全状況、周辺地域の住民からの苦情の発生と処理状況などを含め、住宅宿泊事業者の事業年度終了後と管理委託契約期間満了後にそれぞれ報告

3 住宅宿泊仲介業者
(1)観光庁長官の登録を受けなければなりません。
住宅宿泊仲介業者登録申請書に必要事項を記載し、法第49条1項各号の事由(成年被後見人・被保佐人、一定の刑事前科、暴力団員、自己破産・未復権など)がないことの宣誓などが必要となります。
書類の提出先は観光庁 観光産業課となります。所在、電話番号などは観光庁のホームページをご参照下さい。
(2)管理業者が個人である場合と法人である場合とでは添付書類が異なります。
(3)添付書類の中で官公署が発行する証明書類は、原則として、申請時より3か月以内に発行されたものとなります。
(4)登録は5年ごとに更新が必要となります。
(5)新登録時、1件あたり9万円の登録免許税の支払いが必要です。
(6)不当な勧誘や違法行為などのあっせん等は禁止されます。具体的には、以下のとおりです。
① 宿泊者に対し、違法なサービス提供をし、これを受けることのあっせんをし、またはこれらの便宜を供与すること
② ①のあっせんまたは便宜供与に関する広告をすること
③ 宿泊者に対し、特定のサービスを受けることまたは特定の物品を購入することを強要すること
④ 宿泊のサービス提供をする者と取引を行う際に、当該者が法第3条第1項の届出をしたものであるかどうかの確認を怠る行為
(7)住宅宿泊仲介契約の締結前、宿泊者に対し、以下の事項につき書面を交付して説明しなければなりません。
① 住宅宿泊事業者の商号、名称または氏名及び届出番号
② 宿泊者が宿泊する届出住宅の特定情報
③ 宿泊者が住宅宿泊仲介業者に支払うべき対価、報酬及びこれらの支
払いの時期、方法
④ ④の対価により提供を受けることができる宿泊サービスの内容
⑤ 責任及び免責に関する事項など
(8)標識の掲示
その営業所または事務所ごとに、見やすい場所に、国土交通省令で定める様式の標識を掲示しなければなりません。
但し、インターネットなど電磁的方法によって事業者名、登録年月日、登録番号などを公示する場合は例外です。
(9)当該物件について適法性、違法性を確認する法的な義務があります。

以上